イラスト出典:People illustrations by Storyset
心身を病んで会社を辞めるとき、知ってて良かったこの制度
会社勤めのストレスやなんかで心身を病んでしまい、会社を辞めざるを得ない状況になったとき、
会社を辞めて失業給付をもらえるのは、ふつうは3ヶ月間程度です。
でも、体調を崩したり、鬱(うつ)な状態になっていて、3カ月間程度では気力的・体力的にも回復できるか不安・・・その期間にも次の仕事を探したりしないといけないし・・・・
かといって、それ以上収入がない状態で何か月も生活する貯えもないし・・・・
こんな状況になったら、なかなか今の会社を辞めたくても辞められませんよね。
辞められないまま無理を続けていると、とうとう最後には完全に心身の健康を崩してしまうことになってしまうでしょう。
そうならないために、利用できる制度を今回は解説します。
条件を満たしていて、きちんと手順を踏めば、最大で2年6か月間も手当を受け取ることができます。
最大で2年6か月間、手当を受け取る方法
まずは、最大で2年6か月間、手当をもらう内訳を簡単に解説します。
社会保険(公的保険)には、「健康保険」「雇用保険」「労災保険」「厚生年金」があります。
この中の「健康保険」と「雇用保険」の制度を利用します。
健康保険は、病気やけがで働けなくなった人の生活を保障する制度です。
申請をすれば、「傷病手当金」を受け取ることができます。
受け取れる金額は、退職前12か月間の給与(額面)平均の65%。
受け取れる期間は、最大18か月間。
25万円の給与の人なら、最大2,925,000円(25万円×65%×18か月)受け取れます。
雇用保険は、就職できる状態で就職する意思がある失業者を保障する制度です。
申請をすれば、「失業給付」を受け取ることができます。
受け取れる金額は、退職前6か月間の給与(額面)平均の60%。
受け取れる期間は、最大10か月間。
(就職困難者は、45歳未満で10か月間、45歳以上で12か月間)
25万円の給与の人なら、最大1,500,000円(25万円×60%×10か月間)受け取れます。
つまり、「傷病手当金」最大18か月間+「失業給付」最大12か月間=30か月間(2年6か月間)となります。
制度を利用するための条件と手順
条件として、現在まで社会保険に1年以上1日も途切れずに加入していることが必要です(国民健康保険は適用外)。そして、傷病手当金と失業給付は一緒には受け取れません。
傷病手当を受け取りながら病気の治療をする。
↓
失業給付を受け取りながら就職活動をする。
この順序となります。
そして、これから説明していく手順をきちんと踏んでいきましょう。
1.退職の意思を伝えて、退職届を提出する(退職日の1~2ヶ月前くらいから言っておいた方が良いでしょう)
2.在職中に連続で3日以上会社を休む。
傷病手当金の受け取り条件が、「在職中に連続3日以上、傷病で働けなかった日がある」となっていいます。この「連続3日以上」には、例えば会社の休みが、土日祝・GW等であれば、この休日もカウントされます。有給を使っても良いです。
とにかく、3日以上の連続した休みが絶対条件になります。
3.この3連休初日に病院で受診して、医師に働けない状態であることの診断書を出してもらう
診療内科・精神科・メンタルクリニックなどで受診して、
- 会社での現状と自分の精神状態
- 会社で働くことが心身的に困難であること
- 会社を休ませてもらうために診断書を出してほしいこと
以上をきちんと伝えましょう。
ここで気を付けなければいけないのは、「職場でのストレスが原因」の鬱(うつ)などと診断書に書かれてしまうと労災扱いになってしまい、傷病手当金が受け取れなくなってしまうことです。
しかも、鬱(うつ)は労災の認定が難しいです。また会社を訴えるのも大変だし嫌ですよね。
もし訴えたいのであれば、制度的には一旦傷病手当金でもらって、その後に労災で訴えることはできます。でもこの場合、傷病手当金は返還しなければいけません。
「原因:不詳」と書いてもらうのが望ましいです。このへんのことは、わかってくれている医師が多いと思いますが、もし就労不可の診断書を出してもらえなかったら、別の病院に行ってみましょう。
もちろん、本当に心身が辛く、これ以上の会社勤務が困難な状態である場合です。
4.退職日は欠勤する
退職日当日は出勤してはいけません。
退職日に出勤してしまうと、退職日まで出勤していたのだから就労可能な人と判断されてしまいます。
何があっても退職日に出社してはいけません!(退職日が公休日や有給日であっても休んだことになります)
どうしても出社する用事があっても、退職日を過ぎてからします。
健康保険(傷病手当金)の手続き
では、傷病手当金をもらうための具体的な手続きの解説をします。
1.健康保険を切り替える
①健康保険を国民健康保険に切り替える。
②会社で入っていた健康保険を任意継続する。
どちらが安いかは人によるので、市役所か区役所に聞いてみましょう。
①か②を健康保険脱退後、世帯主が2週間以内に選ばなくてはいけません。
分からなければ、国民健康保険に切り替えておくのが無難でしょう。
国民健康保険申請は会社の健康保険を脱退した後、世帯主が14日以内に必要な書類を用意して
区役所の保険業務担当窓口にて届出を行います。もし世帯主以外が届出をする場合は、別途
「世帯主の委任状」が必要です。
2.年金は免除申請ができる
退職したら国民年金は免除申請ができます。
「国民年金の退職による免除特例」→市役所などの年金窓口で相談してみましょう。
3.傷病手当金の申請準備をする
申請用紙の入手先・・・協会けんぽ(ほとんどの人がこれでしょう)
協会けんぽ以外・・・けんぽれん健保組合検索
もしくは、健康保険組合に問い合わせ
申請用紙には・・・自分が記入するページ
勤務先の会社が記入するページ
医師が記入するページ があります。
4.2回目の通院&傷病手当金申請書記入依頼をする
- 退職して1週間以内に病院で再度診察を受ける。
- 症状を伝える。(眠れない・気分が沈む・仕事に集中できない等)
- 3.の申請書を医師に渡して、傷病手当金を申請したいので記入して欲しい旨を伝える。
- 1か月以内を目安に次の診察の予約を取って帰る。
5.会社に申請書の記入を依頼する
傷病手当金の申請のため、申請書に直接書いてもらうか、申請書(事業主記入欄)を会社に
送るなどして、記入をお願いします。
郵送で送る場合は、返送用の封筒や切手を付けておきましょう。
病名などが会社にばれることは、ありません。
6.加入している保険組合へ送付する
3.で解説した通り、申請書類には以下のページがあります。
- 自分が記入するページ
- 元勤務先の会社が記入するページ
- 医師が記入するページ
協会けんぽなら合計4枚。組合によっては3枚となります。
これらを全て一緒に封筒に入れて、在職中に加入していた健康保険組合に送付します。
以上の申請手続きで1か月間くらいはかかるでしょう。
そして申請してから1か月くらいで、支給決定通知書か不支給決定通知書のどちらかが届きます。
7.雇用保険の受給期間を延長する申請をする
これは、退職後1か月~2か月程度の間にやっておきましょう。
なぜなら、雇用保険(失業給付)は退職後1年を過ぎると貰えなくなるからです。
だから、1年経っても貰えるようにしておく「受給期間延長申請」をしておきます。
傷病手当金は医師が働ける状態にあると判断するか、申請初日から18か月間が経過するまでは
貰えます。
手続きは、ハローワークへ行って受付で「病気治療のため、受給期間延長申請書を出したい」旨を
伝えましょう。
ただし、退職日から32日以降でないと受け付けてもらえません。
8.傷病手当金が支給されることになったら、1か月に1回は通院する
1か月に1回は通院して、1か月に1回、傷病手当金受給申請書を保険組合に提出します。
治療の意思がないとみなされないためです。
「毎回、元々働いていた会社に書いてもらわなければいけないの?」と心配になるかも
しれませんが、これは必要ありません。元勤務先に書いてもらう欄は空欄で問題ありません。
退職後最初の1回だけ書いてもらえばOKです。
*ほかに奨学金を借りている人は給付猶予を申請できますので、調べてみてください。
雇用保険(失業給付)の手続き
失業給付は、働ける状態になった人が就職活動中にもらえる制度です。働けない人はもらえません。
よって、病気が治って働ける状態になって医師に「就労可能意見書」を書いてもらう必要があります。もしくは、18か月傷病手当金をもらってからとなります。
*公務員は傷病手当はありますが、雇用保険はありません。
では、失業給付をもらうための具体的な手続きについて解説をします。
1.ハローワークへ行って受給期間延長申請を解除します
まずは、傷病証明書と就労可能意見書が必要となりますので準備します。
通院していた病院に行って、就職活動を始めるのと、失業給付をもらうために「傷病証明書」と
「就労可能意見書」を医師に書いてもらいましょう。
そしてハローワークへ行って、受給期間延長申請を解除してもらいます。
働けるようになったので就職活動をして、失業給付をもらいたい旨を伝えてください。
傷病証明書と就労可能意見書のほかに、印鑑・離職票・受給期間延長通知書などが必要と
なります。事前に電話で必要書類などを聞いておくといいでしょう。
この時、自分が就職困難者であることを必ず伝えてください。
ふつうの失業給付は3か月程度です。しかし、就職困難者の場合は45歳未満で300日、45歳以上で
360日給付を受けることができます。
就職困難者の定義については、以下のサイトをご参照ください。
2.求職活動をする
失業給付は就職の意思が
前述したとおり、雇用保険は、就職する意思がある失業者を保障する制度です。
就職する意思があることを示すためにも、月に1回はハローワークへ行って求職活動を行い
ましょう。
健康保険の方は区役所、市の相談窓口で減免申請もしておくと良いでしょう。
3.就職が決まったら
再就職手当がもらえる可能性があります。
給付日数の残日数に合わせて給付金を全額もらった場合の60%程度がもらえます。
就職が決まったら、ハローワークで確認してみましょう。
職業訓練校
職業訓練校とは、国や自治体が運営している、失業者の再就職のための職業訓練を行う学校です。
職業訓練校に行く場合、受講料は無料なうえ、その期間は給付期間が延長されます。
次のステップへの学びのため利用するのも、非常に良い制度だと思います。
詳しくは以下のサイトをご参照ください。
まとめ
以上のように一定の条件と手順を行えば、「傷病手当金」最大18か月間+「失業給付」最大12か月間
=30か月間(2年6か月間)を受けることができます。
これらの制度は病気やけがで働けない人を救済するための制度です。
よって当然、嘘をついて国からお金を受け取るのは犯罪です。
しかし、本当に心身に支障(自律神経失調症・うつ・適応障害など)をきたして辛いときには、これらの制度を利用することに後ろめたさを感じる必要はありません。
無理をしすぎて完全に心身をこわしてしまったら、回復するのにたいへんな時間がかかってしまったり、回復自体が困難になってしまうかもしれません。
そんなときのためにある国の救済制度です。
保険料をきちんと払ってきたのであれば当然の権利でですから、躊躇せずに利用しましょう。
以上のように、こういう制度があることを知っていれば、ある程度心に余裕と安心感がもてますよね。
逆に知らなければ、このような制度を利用することができません。当然ながら、自分が申請しないと貰えませんからね。
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